改正に関する論点


改正に関する論点

改正に関する論点 ネット選挙解禁にあたり、国会審議では二つの案が提出されました。自民党・日本維新の会・公明党案(以下自民案)と、民主・みんなの党案(以下民主案)です。5政党が案を提出していることからもわかるように、ネット解禁自体は審議入りを前に大筋で合意ができていました。実際、この2案は大部分が同じ内容です。しかし、大きな相違点があり、そこが審議の中心となりました。

2案の共通点

まずは2案の主要な共通点を確認しましょう。この共通点に関しては、実際に審議で問題なく通過しましたので、次項の「できるようになること」で詳細をご紹介します。

簡単に概要を述べると、一番はウェブサイトの利用を“全面的に”解禁です。ただし頒布者の氏名やメールアドレス等の表示を義務づけられました。さらには、インターネットを利用した選挙後の挨拶行為が解禁されます。その一方、迷惑行為や中傷などのネガティブキャンペーン等を防止するための規定も追加されています。

ここで一つ抜けているものがあります。インターネットの中でもっとも多くの人が利用し、日本中に浸透している「メール」の利用に関してです。これが今回の審議の争点となりました。

2案の相違点

2案の相違点 今回の争点は電子メールの取り扱いと有料インターネット広告についてです。特に重要なのはメール。民主案ではメールの使用を“全面的に”解禁、一方の自民案は送信できるのは候補者と政党に限定しました。つまり、自民案でいくと、立候補していない筆者が知人にメールで「Aに投票して!」とか「Bさんを落選させよう!」という選挙運動のメールの送信ができないということになります(ちなみに、自分の情報を明示したツイッターやフェイスブックに書き込むことはOK)。そして民主案では、すべてOKにすべきという意見です。

この違いは重要です。メールを候補者や政党に制限すべきという案は、ツイッターなどが原則公開されるものであるのに対し、メールは非公開のもの、つまり送受信者しか内容を把握できないものであることを理由にしています。当人が知らない間に誹謗中傷などの悪意のあるメールが出回る可能性があり、選挙の公平性が損なわれることを問題視しています。一方の民主案は候補者がOKで一般有権者がダメな理由がないと主張しました。誹謗中傷メールなら、候補者にも可能性がないとは言えません。

単純な違いのように思われるかもしれませんが、この意見の違いを“ネット選挙の主体がどこにあるか”との違いと見る考え方もあります。政治家の立場から考えれば自分はやりたいけど大衆がやるのは不安、一方有権者の立場から考えれば、なぜ政治家がOKで自分はダメなかということになります。つまり、今回の改正は有権者のためではなく政治家のためのネット選挙解禁なのではないか、という意見もあるわけです。

もう一つの相違点が、インターネットの広告禁止と同時に特例として認める有料のバナー広告(註1)についでです。自民案が政党のみOKであるのに対し、民主案は政党に加えて候補者も認めることを求めました。自民案ですと、無所属の候補者はバナーを出すことができなくなるためです。

上記のメール・バナーの問題に関しては、いずれも自民案になりました。したがって次の参議院選(2013年夏)では、メールは一般有権者NG、バナーは政党のみということになります。しかし、参院選以降の国政選挙までに、いずれも「検討し、必要な措置を講じる」ということで合意されていますので、今後も注視していく必要があるでしょう。