ネット選挙とは


ネット選挙とは

ネット選挙 現在、ニュースを賑わしている「ネット選挙」ですが、これまで日本では、選挙期間中にインターネットを利用した活動が禁止されていました。つまり、選挙期間中にブログを更新したり、ツイッターでつぶやいたりということができなかったのです。その根拠となっていたのが公職選挙法を改正し、ネット利用できるようにしようというのが、今回の動きです。

先の2012年12月の衆議院選挙において、橋下徹大阪市長が選挙期間中にもツイッターで選挙活動を続けたため、公職選挙法に抵触する恐れがあると話題になったことは記憶に新しいのではないでしょうか。橋下市長は政党代表代行(選挙当時)でありましたが、自身は候補者ではなく、法違反には当たらないとの解釈を示し、ツイッターをし続けました。また、「当選御礼」は、選挙期日後の挨拶行為の制限に抵触する恐れがあります。つまり、自身のツイッターやブログに当選のお祝いコメントをもらったとしても、そのお礼を書き込むことができません。

これらの例は、いわゆる“グレーゾーン”。法に抵触する恐れがありますが、この程度では捜査機関が動くこともあまりないようです。しかしとにかく、「公職選挙法」は “分かりにくい”のです。

改正前の公職選挙法

公職選挙法は昭和25(1950)年に制定されました。「選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする」とし、その当時の選挙事情に則って、さまざまな選挙権や選挙区、選挙期日や投開票、選挙運動に関することを細かく規定しています。

実は公職選挙法には「インターネット」という文字がどこにも記載されていません。そもそも制定当時には、そのようなものを想定していなかったのです。ですから、インターネットの利用禁止とは、第142条がインターネットにも当てはまるとした解釈によっています。

公職選挙法第142条とは、文書図画(とが)の頒布に関してを定めています。ここの「文書図画」とは、ビラやハガキなどのダイレクトメールのことで、具体的に数量の制限まで明記しています。例えば、衆議院(小選挙区選出)の候補者なら、一人につき通常ハガキ35,000枚、届出済の二種類のビラ70,000枚です。このように具体的に制限することで、資金のあるなしの差が出ないようにしています。

そして、この「文書図画」が、インターネット上の文書や画像にも当てはまると解釈されてきました。ですから、選挙期間中に許されるモノ以外となり、ホームページやブログの更新、ツイッター・フェイスブック、そしてメールの送信も禁じられてきたのです。

これまでの改正の動き

これまでの改正の動き インターネットが禁止されてきた法解釈として、制定時に “許されるモノ”リストに入っていないのは「時代」として理解できるでしょうが、「なんで今まで改正がされなかったのか?」という理由にはなりません。その当時、想定されていないモノなのですから、改めてきちんと検討してしかるべきでしょう。

実は、90年代にはすでに、インターネットが普及しているという認識から、この法解釈は形骸化しているとの議論が起こりました。改正賛成派は、情報化社会の主役であるインターネットが使用できないことは、有権者の「知る権利」を侵害しているという意見。一方の反対派は、インターネット上のセキュリティの問題、いわゆる「なりすまし(註1)」やネガティブキャンペーンなどの弊害から慎重になるべきとの意見でした。しかし、この反対派の意見は立前であり、要するにネットになれていないベテラン議員や職員たちが単純に自分達の不利を恐れて拒否(うやむやに先延ばし)していたと捉える人もいます。あえてキツイ言い方をすれば、この件を「世代間闘争」であると訴える人までいました。確かに、“若手議員”対“重鎮議員”の構図も否定できません。

具体的にネット選挙解禁の法案が国会審議に入ったのは、3年前の2010年、民主党の鳩山内閣の時です。しかしながら、ご記憶があるでしょうが、鳩山元首相は突然退陣表明をしました。この時点で国会はストップ。重要法案は成立せず、そのなかにこの法案も含まれていたのです。ここで成立していれば、先の2012年12月の衆議院選挙でもネットを利用した選挙になっていたはずです。

そして、民主党政権が倒れ、自民党が復権した今、法案が成立をみました。結果として、民主党政権が一票の格差の是正などの最重要課題はもちろん、ネット選挙解禁など、有権者の権利にとって重要な法案を成立できなかったことは、残念なことと言わざるをえません。

註1: 「なりすまし」とは、本人になりすまして他人がネット上で活動すること。